本作はグリザイアシリーズの第一作目にあたる作品である。が、しかし、本作は別に次の作品へのプロローグであるなどといったことはなく、主人公とヒロインの間に発生する問題は今作品の中で終息する。ヒロインの数は5人であり、それぞれかなりのボリュームのある内容となっている
本作について私が素晴らしいと考える理由としては共通ルートから個別ルートまで、そしてギャグからシリアスまで一切作品中物語がだれることがない点だ。本作ははじめはかなりギャグテイストの強いストーリーが展開され、そこから徐々に主人公やヒロインの過去が展開され、そしてシリアスな場面へと展開が進んでいくが、それらの展開が信じられないほどスムーズに、シームレスに展開されていく。少々癖のある主人公の経歴も作品を読んでいれば自然と頭に入ってくる形式となっているし、この主人公の経歴に端を発する様々な専門用語も読んでいればおのずと理解できるようになっている。ここまで見事に、嫌みなくストーリーの布石を打っている作品はそうないのではないかと個人的に考えている。
しかし、プレイすればするほど「この完成度で1作品めって、残りの作品ではいったい何を描くんだろう……」という気持ちになるかもしれない。ぜひとも2作品目の「迷宮」をプレイしてほしい。「迷宮」をプレイし終わったころにはおそらく自然と「楽園」に手が伸びているはずだ。